「ブレインストーミング」を問い直せ

PHOTO: Fortune Brainstorm TECH 2011 by Kabacchi via Flickr

新規事業、展開や新しいサービス、商品の開発といった新しいアイディアを考え出すとき、私たちは当たり前のようにブレインストーミングを行ってきました。ブレインストーミングとは、グループでアイデアを出し合い、問題を定義し、どのようにしたら最善の結果を出せるかを話し合うことです。ビジネスにおいて新たなアイディアを出したい場合、会議室に人を集め、お互いの考えを出し合うことは一般的な手法です。その際には、新しい考えや意見を出し易いように、他人のアイディアを批判することはしないようにする。これが典型的なブレンインストーミングでした。

しかし、常にそうだったわけではありません。ブレインストーミングのプロセスは、米国のオムニコ・グループの傘下にある広告会社であるBBDOの創設者の一人である、Alex Osborn氏によって1940年代に開発されました。ブレインストーミングのプロセス考案にはOsborn氏自身のクリエイティビティー(創造性)に関する持論が大きく影響しています。彼は、創造性は不安定で変化しやすい性質であるが故に、アイディアを批判することは人々の創造性の自由を奪う行為だと合理的に考えていました。私たちは”評価”や”批判”が邪魔をしない場合にのみ、新たなアイディアを出すために頭を働かせることが出来ると考えたわけです。Osborn氏はこのブレインストーミングのプロセスはBBDO社が持っていた未だに色褪せない創造性の秘訣だったと説明しています。。当時、彼の部下である広告担当の社員は、Osborn氏のブレインストーミングの手法を使って、90分間に87個ものアイディアを出したこともあるといいます。これはまさに”クリエイティビティー(創造性)の雪崩”と呼ぶべきものです。しかし、ニューヨーカー誌に掲載されたJonah Lehrer氏の素晴らしい記事で彼は「ブレインストーミングは社員を”創造するだけの機械”に変えている」と指摘し、「この問題の根本は、ブレインストーミングそのものが全くのデタラメであることだ」とブレインストーミングに異議を唱えました。

 

一人で働いた方がよりクリエイティブになれる

そのブレインストーミングに対する激しい非難のオープニングとして、Lehrer氏は衝撃的な実験結果を明確に示しています。それは1950年代に行われた実験の数々です。その内の一つである実験では被験者が一人で複雑なパズルを解こうとしたとき、グループで解こうとしたときの2倍の数のアイディアを考え出せたということが判明っしたといいます。その後、数え切れないほどの研究がこの実験結果が正しいと立証しており、個人を大きなグループの中に投じても、実際にはアイディアを生む力は促進されないことが分かったわけです。グループの力学というものは、指摘されている以上に個人のポテンシャルを抑圧するものなのです。

ですが、Lehrer氏はなぜグループにおける共同作業が個人のポテンシャルを抑えるのかを明確には説明していません。しかし偶然にも、Susan Cain氏が自身の著書である「Quiet:話すことを止められない世界における投資家の力」という本で、その問題に言及しています。彼女はニューヨーク・タイムス紙で、「グループでの作業は、社会的な圧力が影響するために創造性を促進させない」と説明しました。

グループに属する人々は他人に仕事をさせて傍観する傾向にあり、無意識に他人の意見やアイディアを模倣し、自分のオリジナルな考えを失ってしまいがちです。そして、グループ内の同僚やクラスメートからのプレッシャーに圧倒され、自分のアイディアを口に出せないことも良くあります。エモリー大学の神経科学者であるGregory Berns氏は、ヒトは自分自身のスタンスがグループのものと異なるとき、脳にあるへん桃体という、「拒絶されることに対する恐怖」を司る小さな器官を活性化させることを発見しました。Berns教授はこの現象を「他者からの独立に伴う痛み」と呼んでいます。

 

批判はブレインストーミングのプロセスを向上させる

これらの発見は、グループでのブレインストーミングの経験がある人には、納得できるものでしょう。それでは何故、会計分野の出身である私の元同僚のデビーは急に自動車のデザインの有力な専門家になれたのでしょうか。(デビーとは私が大手の自動車会社で働いていたときにブレインストーミングをする会議で一緒だった同僚です)

しかし、この点についてLehrer氏は他の研究で、他者からの批判のが、アイディアを考え出すことを実際には”促している”と指摘しています。ある2つのグループを使った実験では、1つ目のグループには批判することを禁じてブレインストーミングを行わせ、2つ目のグループにはお互いのアイディアについて自由にディベートさせる権利を与えてブレインストーミングをさせてみると、後者の方が前者に比べて20%ほど多いアイディアを生み出し、セッションが終わった後でも次々とアイディアを考え出せたというのです。

なぜでしょうか?その理由についてLehre氏は説明も、実験結果のソースも出していません。しかし、この実験結果は理にかなっているように思います。これまでの伝統的なブレインストーミングの問題点は、「良いアイディアは自発的に生み出される」という仮定に基づくということです。現実には、そのプロセスはより興味深いものだったわけです。たいてい、発明とは発明者がある物事に対して問題を発見することから始まります。良いアイディアというのはその辺にぶら下がっているようなものではありません。良いアイディアとは一種の解決方として生み出されるわけです。ですから、ブレインストーミングを試みているグループに、他者へ批判を促すと、そのグループは問題を見直し、洗練させることが出来るわけです。グループに、より複雑な問題を追加することは創造性を阻害するのではなく、実際にはその問題を解決するためのモチベーションを高めることにつながります。なぜなら、私たちは単純に、より良い解決や解答を、仕事として求められているからです。

 

創造性は事前に計画して生まれるものではない

Lehrer氏はより良い創造的プロセスの方法を模索し、いくつかのモデルを発見しました。ひとつはグループ内における人間関係が、仕事の質にどのような影響を与えるかを調べた、とある教授のケースです。ノースウェスタン大学で社会学を教えるBrian Uzzi氏は、ブロードウェイで最悪のパフォーマンスをみせていた劇団を調べ、それらを「グループ内での協調や協力が強く、まとまり過ぎた劇団」と、「グループ内に余りにも協調性がなく、まとまりが無い劇団」の2つの種類に分けました。すると、まとまり過ぎたグループは集団思考(集団で合議を行う場合に不合理あるいは危険な意思決定が容認されること。「集団浅慮」と訳されることもある。→集団思考 – Wikipedia)に陥りました。一方で、まとまりが無いグループは、お互いを指摘して高め合うというムードを作ることが出来ていませんでした。最も創造的なグループは、基本的にグループ内の人間関係は良好で、かつ、演技をより面白く見せるために、新しいアイディアを十分に取り入れることが出来るグループでした。

一方では、幸運な事実もあります。これまでの研究で、最も成功した科学者のグループはお互いに物理的にとても近い関係だったことが分かっています。ただ他の分野のクリエイティブな人の周りにいるだけで、あなたのブレインストーミングのプロセスは飛躍的に向上するわけです。なぜなら、とても多くのアイディアは井戸端会議のような、他愛もない会話によって生まれるからです。

最も分かりやすい例はマサチューセッツ工科大学の第20ビルが示しています。この第20ビルでは立ち話による自然なブレインストーミングが多く発生しました。その理由は、ビルの設計が最悪でデタラメだったからです。建物自体はただのコンクリートでしたが、ビル内部には迷路のように入り組んだ廊下と窮屈に設計されたオフィスがありました。ですので、このビルは様々な異なる分野の科学者たちが、自然と廊下ですれ違い、会話を始める仕組みを偶然にも兼ね備えていたわけです。この第20ビルから数多くの発明が生まれたことは、ただの偶然ではなかったのです。レーダーを研究する人から電子レンジ、初期のビデオゲーム、チョムスキーの言語学を学ぶ人たちが、その複雑に入り組んだ建物の構造により、様々な分野の人々と交流を持てたことが、その大きな要因となっているわけです。

 

ブレインストーミングのパラダイムは変えられる?

私がここでLehre氏の記事の内容を並べてきたのは、彼の記事が示す発見が「ブレインストーミングの過程は全くの役立たず」というわけではないかもしれないからです。発見や発明をするには、的を得ている個性的なアイディアが必要であり、批判は創造性を解放するということ、そして私たちの創造性は先程述べたような、クリエイティブな人々と身近にコミュニケーションが取れる環境では、さらに促進されることが分かったと思います。これらの発見はとても価値のあるものです。

まず最初に、ブレインストーミングは解決方法を探すことを目的とせず、問題を見つけることを目的とすれば、よりうまくいくかもしれません。実際、人々は答えを見つけることより、”何が欠けているのか”を見つけることの方が優れています。この事実を認識して、きちんとブレインストーミングに組み込んでみれば、案外良い結果が得られるかもしれません。

例えば、あなたが新しいコンピューターのユーザー・インターフェイス(UI)を開発をしているとします。そのとき、あなたはユーザーが欲しがるであろうUIの理想を語るよりも、利用者が現在の一般的なUIの「何にイライラするのか」、「何がユーザーがしたいことを妨げているのか」、といった現実的な問題を見つけ出した方が、よりクリエイティブになれます。UIデザインのような複雑な問題の解決には、繊細さと深い思考が求められます。しかし、こういった類の問題に対する解決方法は、問題が「解決の為にアイディアを考え出したい」と思えるぐらいに面白くなったとき生まれるものです。私が言いたいことは、「ブレインストーミングのようなテクニックを使い、何を成果として獲たいのかという点を見直してみると、そのテクニックはより便利なものになるかもしれない」、ということです。

最後に、オフィスのデザインは私たちが行う仕事にとても強い影響力を持つといいます。これはデザイナーが企業の根本的なミッションに影響を与える手段を持っているということです。すべてのものが機能的に配置されたオフィスよりも、たとえば第20ビルの話で見てきたような、ある程度の制約と、柔軟性を兼ね備えたようなオフィスデザインをする方が、会社の効率性を高めるかもしれないということです。

思いがけない可能性やアイディアが生まれるようなオフィスデザインを生むことも出来るでしょうし、一切モノを固定しないオフィスだって作ることが出来るでしょう。最もスマートなオフィスとは「完璧」なオフィスではなく、変化に対応できるものなのです。

原文はコチラからどうぞ : The Brainstorming Process Is B.S. But Can We Rework It? | Co.Design

この記事では、今までのブレインストーミングをより効果的に作用させる方法を示していますが、皆さんは独自のアイディアの捻り出し方をお持ちですか?
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