“ギャップ”にハマる? 「秋入学」のワナ

東大が表明した「秋入学」っていったいどうなの?
日本中を飛び回る”流し”の予備校講師にインタビューしてみた

今年度の大学入試も、もう終盤。
しかし今年の大学入試界隈は例年に増してホットだ。

1つはセンター試験をめぐる各地でのトラブル。
もう1つは東大が言及した「秋入学」検討のニュース。
これらについて詳しい話を伺うため、ネット上でも昨年の「奇跡の1分オフ」でひょっとしたらご存じの方もいるかもしれない、日本各地を飛び回る「流し」の予備校講師@freezedeerさんにインタビューを試みた。
そのインタビューの中で浮かび上がった「秋入学」の難点とは――。

―今年の大学受験といえば、今年はセンター試験の社会科などの科目で大きなトラブルがありましたが、ここまでの事態になるとの予感はありましたか?

これは昨年から懸念していました。
今回のセンター試験では、地歴・公民が同じ時間帯での試験となり、10科目から最大2科目まで(「世界史」のA・Bといった同一名を含む科目の組み合わせを除く)の選択が可能となっています。
これをどう実行するかという点で、2科目受験者に対しては1つ目の試験(60分)が終わってからその解答用紙を回収し、2つ目の解答用紙を配布するという形式になったため、現場では混乱が相次ぎました。

―なるほど、問題用紙を先に配ってしまうのですね。

はい。ただ、これには当然ながら当初からまた別の疑問が提示されました。
「1科目受験で足りる人が、2科目受験に望み、120分を使って1科目を解くことが可能なのではないか」と。
それで、東大などの一部の難関大学では、1科目受験で足りる人は「最初に回収した解答用紙しか評価の対象としない」というルールを採用しました。

―ここまで大学ごとの対応が複雑化してくると、受験にあたってのルールをきちんと認識していない受験生もいたりするのでしょうか。

予備校主催の模擬試験などを受ける層には周知されていたでしょうが、そういうのを受けない人のごく一部にはそういうこともひょっとしたらあったかもしれませんね。

―センター当日は@freezedeerさんはゆっくりされていたのですか?

いやいや、そんなわけにはいきません。
予備校の本部から当日の試験問題が送ってくるんですよ。「急いで解け」と。

―解答速報とかコメントとか出すんですか?

そうです。
事前に予備校の生徒(特待生など)にお願いしておいて休み時間に問題用紙持って来い、と約束しておくわけです(笑)。
こうやって入手したもので、講師陣が解答を作成するわけです。
そしてコメントだけでなく、予想点数も出します。
解きながらも、こっちはバクバクなんですよ。「うわ!ここから出してくるとは!」って。

―予想点数って当たるものなのですか?

今年はピッタリ当たりましたね。

―すげーー!さすがプロ。

いやいや、これでも採点中はホントにツラいんですから(笑)。
あと、今回は「現社」から国立受験者が「倫理・政経」へ移動したからか、現社の平均点が12点も落ちていました。
このへんも興味深いところですね。

―さて、今日一番お伺いしたかったテーマに移ろうと思います。
 最近、大学関係で話題となったテーマに東大が突如表明した「秋入学」があります。
 あくまで5年後のお話という状況ですが、海外の大学に対する危機感といいますか、海外の学生の受け入れといいますか、東大としての国際化への焦りといった報道がなされていますが、この「秋入学」実現の可能性についてどのようにお考えですか。

実行に移されると思っていた方が良いでしょう。
いきなり京大が何か改革を打ち出した場合は相手にされないものだったりするんですが、今回のように声を上げたのが東大となるとやっぱり違います。
東大の動きで、だいたい全国の大学での横並びが発生します。
最近の様子を見ていると、実際に全国の国公立だけでなく私立をも巻き込んだ動きとなるような気がします。
もちろん、そうなると大学入試センターとしても対応していかねばなりません。

―センター試験への影響は何かありそうですか。たとえば、時期がズレるといったような。

おそらく、東大側はセンターの時期を動かすというようなつもりはないでしょう。
また3年ほど前に、センター試験を年2回にしたらどうかという話が出たことがありました。受験生の心理的不安を減らすためですね。
これが再度検討される可能性はゼロではないかもしれません。

―大学前に「ギャップ・イヤー」をという掛け声も聞かれるようになりましたが、このあたりどうでしょうか。

ギャップ・イヤー:高等学校からの卒業から大学への入学、あるいは大学からの卒業から大学院への進学までの期間のこと。英語圏の大学の中には入試から入学までの期間をあえて長く設定して、その間に大学では得られない経験をすることが推奨されている。(Wikipedia

その理念をいくら叫ぼうとも、それを秋入学のころの大学入試制度次第では、それは悲惨なものとなるでしょう。
東大は独自に行う2次試験や合格発表から入学までの期間を伸ばしたいとはおそらく思っていない。
そうなると受験生はそのブランクの間、合否が不明のまま過ごすこととなる。これはギャップ・イヤーどころではない。


※画像はクリックで拡大します。

ギャップイヤーは、センター試験と二次の間なのか、センター試験も夏前に移って、卒業とセンター試験のギャップが生じるのかで意味合いが変わって来ますね。センター試験が動かず、東大2次だけ動いた場合が地獄の不安ギャップイヤーということで(笑)

―それは文字通り地獄ですね…。そのブランク期間、受験生はどうなるのでしょうか?

現在でも、浪人となった卒業生に対して勉強などのレクチャーをする高校もあります。
それはある意味、予備校の仕事を高校がやっているということでもあるのですが、ただこのブランク期間の授業を高校が請け負えるかという点では、リソースだけでなく、ノウハウ的にも厳しいのではないかと思っています。

―そうなると予備校側のメリットが大きくなるのでしょうか(笑)

そうなるかもしれませんね(笑)
この時期の生徒なんて1ヶ月もあれば成績はグンと変わってくるので、半年間ともなれば大逆転が当たり前になってきますからね。

―お話を伺っている限りでは横並びで秋入学が実行に移された場合に、高校ごとの受験対策の格差は増すことになりそうですね。

そうかもしれません。
たとえば、地方では予備校教師を招いて高校の先生に対する受験の勉強会を行ったりしているんです。
でも、これを長崎でやるとなると、開催地は長崎市(県庁所在地)ではなく大村市なんです。

理由は「長崎空港があるから」。
長崎はなんたって島だらけですから、島嶼部の先生は飛行機、しかも日帰りで来る必要がある。
現時点でもそういった最新の受験情報への触れやすさといった点でも格差がある状況ですからね。
地方の高校はさらに大変になるかもしれません。

 

この他にも、@freezedeerさんからは少子化の進展から変化してきた予備校のビジネスモデルの変化や、講師の形態の変化といった興味深いお話をたくさん伺い、個人的に楽しく時間を過ごさせていただいた。
朝日新聞の直近のアンケートによると、全国174の大学のうち76人の校長が秋入学について、自校での実施の検討を始めているとしている。
@freezedeerさんは秋入学を「これは大学の構造改革といっていい」と語っていた。
あくまで現在の高校生が直接影響を受ける話ではないが、秋入学導入は日本の高等教育を根本から変えるものであり、議論の先行きが注目される。

参考:
注目!2012年度センター試験変更点 – 東進ドットコム

http://www.toshin.com/parents/2012_center.php?scroll=top

朝日新聞デジタル:秋入学移行、46%が検討 174大の学長調査

http://www.asahi.com/national/update/0212/TKY201202110668.html

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